クリスマス特集2

2008年12月20日
インドでテロ事件が発生しました。
主義主張のため人命を犠牲にしていいものだろうか?
同じ過ちを何十何百と繰り返す人間ってなんなのだろう?


Glenn Miller<Little Brown Jug>

1929年10月24日(木)。ブラック・サーズデーと言われるニューヨーク・ウォール街の株式市場の大暴落に端を発した大恐慌<Great Depression>は全世界に波及しました。
1933年ドイツでヒトラー内閣が成立。再び37年恐慌も加わり暗い世相と経済的クライシスは深まるばかりだった。39年ナチスドイツがポーランド侵攻。犠牲者が全世界で6000万人といわれる第2次世界大戦はまるで人命を塵芥のように消費する最悪の歴史を刻むことになります。

1904年生まれのグレン・ミラーがトロンボーン奏者として、バンドリーダーとして活躍した時期は、このディープな時代背景のなかにすっぽりと収まります。
ひとりでに体が動くスウィング・ジャズの楽しさは暗い世相と密接に関係があるでしょう。人々は癒しの音楽を求めたのです。
ジャズのエッセンスを取り入れ、アンサンブルに重点がおかれた軽快なスウィングはダンス・ミュージックに最適でもありました。

37年グレン・ミラー楽団を結成。楽団の代名詞とも言える<ムーンライト・セレナーデ>のヒットにより、やがて絶大な人気を獲得することになります。

紳士で知的な風貌のポートレートで飾ったCD<The Best of Glenn Millerは楽団の当時の録音をそのまま収録し、主な代表曲を網羅しています。


ベスト・オブ・グレン・ミラーベスト・オブ・グレン・ミラー
1. ムーンライト・セレナーデ
2. 茶色の小瓶
3. 星へのきざはし
4. グレン・アイランド・スペシャル
5. イン・ザ・ムード
6. スターダスト
7. タキシード・ジャンクション
8. ダニー・ボーイ
9. 私の青空
10. ペンシルバニア 6-5000
11. アンヴィル・コーラス
12. 真珠の首飾り
13. ヴォルガの舟歌
14. チャタヌーガ・チュー・チュー
15. ムーンライト・ソナタ
16. 二人の木陰
17. アメリカン・パトロール
18. カラマズー
19. アット・ラスト
20. セントルイス・ブルース・マーチ



<グレン・ミラー物語>
グレン・ミラー物語 [DVD]

ジェームズ・スチュワートの名演によるこの映画のなかでは、数々の演奏シーンとともに心に残るエピソードが紹介されています。

ドサまわりをしながらなんとか食いつないでいた彼は恋人ヘレンに2年ぶりに再会。質屋で値切って買ったイミテーションの真珠の首飾りをプレゼントし、機嫌をとります。貧しい彼の精一杯の愛情表現でした。

二人は結婚し、楽団が人気バンドになったときパーティで、新作<真珠の首飾り A String of Pearls>を披露しながら、今度は本物の真珠をプレゼントします。 夫の妻に対する心憎い演出ですね。たとえ高価でなくてもどれほどうれしかったことでしょう。

結婚式の夜のライブ・ハウスでのルイ・アームストロングとの共演。夢のようなシーンです。

ヘレンの良妻ぶりは堅実な家庭婦人の典型です。
新婚1日目から始めたグレン・ミラー・バンド貯金。節約しこつこつと貯めた貯金はバンド結成の資金となります。
自分のバンドを持つ夢を忘れそうになったとき、夢を忘れないでと思い出させてくれたヘレンの言葉。
二人で考えた<ムーンライト・セレナーデ>という曲名。
結婚10周年を記念しての心温まるパーティで、貧しいながら二人の旅立ちとなった、二人を繋いだテレフォン・ナンバー・ペンシルバニア6−5000の演奏。

適切な夫へのアドバイスと献身。洒落た会話。しみじみとにじみ出てくる人柄。
貧しくてもいくらでも楽しく生きていけるものなのよ。そう、音楽さえあればね。

グレンが考える前衛的なバンドは従来のバンドにホーンセクションの数を増やし厚みのあるサウンド。それでいて重くならず表現力が増した緻密なアレンジとアンサンブル。

グレン・ミラー独自ともいえるサウンドの誕生は待ち望んでいた新しいビッグ・バンドの形でもあったのです。
ボストンの舞踏場のリハーサルでのミラー・サウンドが確立されたシーン。そして不安な始めてのムーンライト・セレナーデの演奏。フロアの多くの人がダンスすることを止め拍手が沸くシーン。音楽家にとってこれほどうれしい場面はないでしょう。試行錯誤してたどりついた自分のサウンド。
万人に受け入れられるオリジナリティこそ命です。

これ以後記録的なセールスを続けレコード界を席巻します。

音楽の果たすべき役割と自分の使命を十分に知り尽くしていた彼は、そんな絶頂期にあって軍に志願します。大戦の真っ只中に飛び込んでいくのです。
行進で突然始めた<セントルイス・ブルース>の演奏。兵士の顔がみるみる変わっていきます。いかにもアメリカ的な陽気さで行進も楽しくなるのが不思議。
空襲警報がなっても爆弾が落ちても止めようとしない<イン・ザ・ムード>演奏。
飛行機格納庫でのシンガーを加えた楽しいスウィング<チャタヌーガ・チューチュー>。

音楽が好きで好きで好きで、本当に好きで、音楽を通し励ますことを忘れず、奉仕し、音楽の化身のような人だった彼を、戦争は奪った。

クリスマスを目の前にした44年の12月15日、パリへ飛んだ飛行機はドーバー海峡で行方不明となり、帰らぬ人となったのです。

戦争ほど残酷なものはありません。
善良な人々の夢を奪う戦争の悲惨さは音楽の素晴らしさと相反するものです。

彼はヘレンに宛てた手紙のなかで、「クリスマスの特別プログラムが放送される。絶対に聞き逃すなよ。クリスマス・プレゼントだ」と。

クリスマスの夜。ラジオから流れてきた<ムーンライト・セレナーデ>。
そしてアナウンスは言います。「グレン少佐はここにおりません。しかし彼の計画通りに放送します。最初の曲はこの放送のため、彼が編曲した、皆さんおなじみの、そして彼のご遺族には思い出の曲です」

流れてきたのは軽やかにスウィングする<茶色の小瓶>。
へレンが好きだった<茶色の小瓶>はクリスマス・ソングではありません。
でも実際に64年前のクリスマスを祝うラジオからこの曲は流れてきたのです。
平和を祈り、愛する人のためにアレンジした素晴らしい贈り物。かけがえのない人へ届けられたクリスマス・プレゼントだったのです。

一つの楽器が運命を変える。
本当にその通りですね。音楽が希望を与え続けるものであることを、ただ無条件に、何の疑いもなく信じた彼の遺志は受け継がれ、ニュー・グレン・ミラー楽団として再結成。その活動は現在まで続いています。


音楽の都といえばウィーンですが、わたしが言う都とは心の奥にある都のこと。一人一人にある心の奥の音楽の都は、人生を支えるそれぞれのかけがえのないトーンとして不変の調べを奏で、奥深い魔法のような力で、力強く生きていくことを促しているのです


どのような理由があれ、暴力で解決できることなど一つもありません



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